基礎体温より夜の体温が低い? 普通の体温とどう違うのか
女性にとって、自身の体調――引いては生理周期を把握するには、基礎体温の測定は欠かせないものですが、様々な疑問があることでしょう。
例えば、基礎体温の乱れから何が分かるのか、基礎体温よりも夜の体温が低い原因は何なのか、そもそもどうして起床時に計る必要があるのか等、見ていきましょう。
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基礎体温は何故大事?夜に計ってもいいの?高い・低いと何があるの?
基礎体温は女性にとって、とても大切なもの。――という話を知らない人はいないでしょう。
しかし、実際に”基礎体温がどういうものか”をしっかり把握している人は、とても少ないのが現状です。
そもそも、人間は、何も行動していない時でも、体温を自分で作り出している生き物(恒温動物)です。
これは、体内で起きている基礎代謝(筋肉や内臓の動き)によって発生する熱を上手く利用できているからで、この、”他の行動を何もしていない時”、つまり”安静時”の体温のことを、基礎体温と呼びます。
基礎体温は基本的に一定で、病気などの体調が変化がない限り36度代台であるのが一般的です。
ただ、大人の女性に関しては、その中でも体温が”二層性”と呼ばれる、低い時期と高い時期に区別できるようになっています。対して男性は、一生を通して常に一定の一層性と呼ばれ、この区別がありません。
この違いを生み出しているのが、生理です。
生理周期に合わせ、女性の体の中では様々なホルモンの分泌が制御されていて、このホルモンの働きによって体温の違い――いわゆる低温期・高温期が生まれるのです。
基礎体温を計ることで、生理周期の把握や、妊娠、そしてストレスや病気の有無などに気付ける。だから基礎体温は大切だ、と言われているのです。
しかし、実際に基礎体温を計るに当たり、多くの人が疑問点を持っていることでしょう。
何故、夜の体温のほうが基礎体温より低いことが起きてしまうのか、また基礎体温の乱れは何を示すのか、どうして測り方が細かく決められているのか――
そうした疑問を解消し、是非、自分の体調管理に役立てましょう。
そもそも基礎体温の変化は何故起こるのか
先に述べた通り、基礎体温を計ることによって、女性は自分の体のことを深く知ることが可能です。
自分の生理周期が一体何日間隔なのか。排卵が、そして生理が起きるのはいつなのか――といった基本的なことから、自分の体の中で何か異変が起きていないかといったことを知るきっかけにもなり得ます。
何故そう言えるのか、というと、女性の体の周期を担う女性ホルモンの働きが把握できるようになるからに他なりません。
女性ホルモンとは、女性に生理を起こす一連の現象をコントロールするホルモンであり、”エストロゲン”と”プロゲステロン”がこれに当たります。
それぞれの働きを平たく言えば、エストロゲンは低温期、女性の体、もっと言うなれば卵巣に働きかけ、排卵の準備をするホルモンです。対してプロゲステロンは排卵後の高温期に、受精した(かもしれない)卵子を受け止めるべく、子宮内を整えるホルモンです。
そして重要なのは、エストロゲンは体温を下げる働きが、プロゲステロンは体温をあげる働きがある、という点です。
もし、エストロゲンの分泌量が何らかの原因で少なくなっていれば、低温期に体温がしっかり下がらず、また卵子が受精に適した状態にまで成熟しきっていない可能性が考えられます。
逆にプロゲステロンの分泌量が少なければ、高温期が起きず、やはり排卵障害が起きている可能性があることを示します。
このように、継続して基礎体温を計ることで、多くの情報を得ることが出来るようになるのです。
基礎体温を計ることは、必ず将来の自分のためになる
「基礎体温を付ける必要があるのは、生理不順や妊活中の人だけでしょう?」
「でも私は、生理周期も一定だし、基礎体温を計る必要はないわ」
「きっと将来的にも、子供を望むことはないだろうから、閉経しても構わない」
そう考える人もいるでしょう。
しかし、これは大きな間違いです。
一番恐いのは、「今は妊娠を望んでいなくても、将来的に妊娠を望む心境に変わった時、妊娠に適した体を維持できていなかった」という状況に陥ることです。
排卵障害が起きており、実際には排卵がされていなくても、生理自体は起きる、という状態があることをご存知でしょうか?
これを”無排卵月経”と呼び、この状態を放置してしまうと、20代、30代での閉経(40代未満の閉経は”早期閉経”と呼ばれます)が起きる可能性も高くなります。
一度閉経してしまうと、女性の体は再び自然に妊娠できる可能性は限りなく低くなり、加えて卵巣機能の低下により、更年期障害が早くに起きてしまうなど、妊娠を望まない女性にとっても好ましくない状況になります。
この状態からの妊娠には、辛く、長い期間の治療と、そして決して安くない治療費がかかります。
事実、女性不妊の体験談の中には「毎月生理が来るから大丈夫だと思っていた」という声も、決して少なくありません。
同時に「若い頃は子供が欲しくなかったけど、今になって欲しくてたまらなくなった。でも気付いたら不妊になっていた」という人も、やはり存在します。
とは言え、基礎体温を継続して計るのはとても大変!
ただ、実際に基礎体温を毎日計り、それを管理することの難しさは、基礎体温を付けているという女性の少なさからも証明されてしまっています。
ある調査では、基礎体温をしっかり付けている女性は全体の2割に満たない、というアンケート結果もあるほどです。
何故、そんなに大変なのかというと、基礎体温を計る時の注意点を見てみれば一目瞭然です。
・毎日、目が覚めたらすぐに(横になったままの状態で)体温を計らなければならない
・測定前や測定中は体を動かしてはいけない
・毎日、できるだけ同じ条件で測定するのが好ましいが、起床時間がずれても測定しなければならない
・専用の体温計(女性体温計)を用意し、口腔(口に咥えて)測定する
・測定結果や、その日の気分や体調も記録しておく必要がある
…と、中々厄介だからです。
特に、忙しい毎日を送っている女性にとっては、測定中の数分すら惜しい、という時もあるでしょうし、例えば旅行中などのように、人目があって計ることが難しい、という場合もあるでしょう。
また、測定中に二度寝をしてしまう危険もあるため、中々日常の習慣に取り入れ辛いと言えます。
それでも、大人の、そして今後子供を産むことを望む可能性があるのであれば、早いうちから自分のリズムを知っておくべきです。
基礎体温よりも、夜の体温の方が低いのはおかしい?
基礎体温について、多くの女性が勘違いしている点について見てみましょう。
それは”平熱と基礎体温は異なるもの”ということです。
先に触れた通り、基礎体温は”最小限の生命活動以外に何もしていない状態の体温”であり、対して平熱は”通常の活動をしている時の体温”です。
ここで言う活動とは、それこそ、仕事をしたり、家事をしたり、歩いたりといった”生命活動以外の運動”を指します。
活動=運動をすれば、人間の体は筋肉が動き、そこで熱が生じます。食べた食事を消化する時にだって、内臓や周辺の筋肉が動き、熱が生じます。
このような運動量の違いや、外界の気温の影響、体調など、様々な要因で、平熱は計るたびに違う数値を出すのです。
「朝の起床時に計った基礎体温より、夜の体温の方が低い」、「低温期の筈なのに、昼間に計ったら37度を超えていた」なんていうケースも、当然あり得ることなのです。
ですからそもそも、起床時に計る基礎体温と、その他の時間帯に計る体温を同列に考えてはいけない、と言っても過言ではありません。
(ただし人によっては、高温期や妊娠の超初期には日中や夜も通常よりも体温が高め、という場合もあります)
以上から、基礎体温は”必ず起床時の、目覚めた直後の状態で計る”のが前提であることが分かるかと思います。
例えばシフト制の職業の場合、起床時間がバラバラな人は、理想的な測定方法とは言えませんが、その日起床した直後の体温を計るほうが、正しい計測方法と言えるのです。
基礎体温を計るのに必要な二つのアイテムとは?
基礎体温を計るには、基礎体温計(婦人体温計)を使うことが適しています。
普通の体温計との違いは、やはり何といっても小数点第二位までの数値が出る、という点です。
一般的に、健康な大人の女性の低温期と高温期の平均基礎体温の違いは、0.3〜0.5度だと言われています。
しかも、基礎体温は、同じ期であっても日によって(眠っていた時の状態などにより)小さくばらつきがあります。
加えて排卵期には、低温期の中でも更に体温が低くなるのですが、こうした違いをはっきり知るには、やはり細かな数値が出るほうが適しています。
また、基礎体温を計っても、計りっぱなしでは意味がありません。
手帳に体温を記しておく、という手もありますが、最終的には、やはり変動が目に見える折れ線グラフに書き出す方が、情報として把握し易いでしょう。
手書きの、専用のグラフ用紙もドラッグストアなどで購入できますし、現在では体温計そのものに、パソコンやスマートフォンへのデータ送信機能のあるものもあります。
スマートフォンでも専用アプリもありますから、自分が使いやすい・見直しやすいものを用意して、「計ったら記録する」ことまでを一つの流れとして続けましょう。
最初のうちは、はっきりとした違いが分からないことが多いものです。
ですが、データというものは、比較できるだけの量が溜まれば、その傾向が分かるようになるものです。
その日の体調などを備考として書いておくと、更に自分の体のリズムを知るいい材料になります。
基礎体温の結果、不安な点が出たら、いつ病院に行くべき?
もし、基礎体温を継続して計り続けた結果、何かしら不安な点が出たら、どうすべきなのでしょう?
やはり、そんな時は婦人科で診断を受けるのが、最善策と言えます。
まず、こうした症状があれば、注意が必要になります。
・基礎体温がガタガタで、生理周期がバラバラ(低温期・高温期の差がない/わからない)
・基礎体温がずっと低い状態が続く(低温期の体温が続く)
・基礎体温が高い状態が続く
→生理が来ず、妊娠の可能性がある:生理予定日の1週間後を目安に妊娠検査薬を使ってみる
→生理が来ず、妊娠の可能性がない/生理は来るが、低温期が短く、高温期が長い:疲労やストレスの改善を行う
妊娠の可能性がある場合を除き、その状態が2〜3ヶ月続くようであれば、婦人科を受診しましょう。
ただし不正出血がある時や、痛みや痒みがある、おりものの様子がおかしい等の症状がある時は、すぐに受診すべきです。
どんな病気でも共通していますが、治療を始めるタイミングが早ければ早いほど、予後が良くなる・将来に不安を残さずに済みますし、遅くなればなるだけ、その治療に時間がかかります。
たとえ原因が日々のストレスだと分かっていても、同じです。
女性の生理に関しては、女性ホルモンの分泌を司る脳の視床下部及び下垂体は、ストレスを感じると、自信の生命活動を優先するため、生理を後回しにすることが分かっています。
この状態が続けば続くほど、体は正常な生理周期から遠ざかっていきますから、「おかしいな」と感じたら、生活習慣の改善を図りつつ、基礎体温の動向を見守りましょう。