安産に向けて! 妊娠中に腹筋トレーニングが必要なワケ
実は妊婦さんにとって、腹筋を鍛えておくことは、安産に向けてとても重要なことです。
しかし、普通に思い浮かべるような腹筋運動では、大切なお腹に力がかかってしまい、とても危険です。
どんな腹筋トレーニングならば妊娠中にも行えるのか、そして何故必要なのかを見ていきましょう。
このページの目次
妊娠中に腹筋を鍛えるのは、出産に向けて重要なポイント
妊娠中には、何かと気をつけなければならないことが沢山あります。
喫煙やアルコール摂取が厳禁なのは言うまでもなく、体を冷やさない、無理をしない、安易に薬を飲まない(※)、○○を飲んだり食べたりしてはいけない――実に様々です。
中でも、「お腹に力をかけない」「重いものを持たない」と、”お腹に力のかかる行為”はダメ!と言われています。
だからといって、全く体を動かさないのも問題です。
体調に問題があり、安静にしなければならない場合を除き、妊娠中も適度な運動をしなければなりません。
そして、お腹に力をかけてはいけないとは言われていますが、実は妊婦さんにとって腹筋を鍛えておくことは、出産に向けて重要な準備の一つといっても過言ではありません。
本来は、妊娠前から腹筋を適度に鍛えておくことが出来ればいいのですが、中々そうもいきません。
それでも、妊娠中からでも腹筋を鍛えることは可能です。
では、どうして妊婦さんに腹筋が必要なのか、お腹に負担をかけず腹筋を鍛えるにはどんなことをすればいいのか、気をつけるべきことは何か等、見ていきましょう。
※妊娠前からや、妊娠中に病気に罹った時は、絶対に自分の判断で服薬を続ける/やめることはしてはいけません。
妊娠がわかった時点で、必ず産婦人科や主治医と話し合い「この薬は飲み続けていい」と言われたものに関しては、指示に従って服薬しましょう。
どうして腹筋を鍛えておいたほうがいいの?
まず、何故、妊娠中に腹筋を鍛えておく必要があるのか、その理由について見てみましょう。
第一に、腹筋を鍛えておくと、出産時に負担が軽減される、という点です。
経膣分娩(普通分娩)の場合、陣痛に合わせていきむことになります。この時、腹筋の力があるかないかで、分娩にかかる時間が異なります。
また、腹筋は分娩時の子宮の収縮にも大きく関わっており、収縮の力が強いほど、また分娩時にかかる時間が短くなる、つまり安産となり、お母さんにとっても、赤ちゃんにとっても負担が少なくなるのです。
第二に、妊娠で大きくなってくるお腹を支えるために、腹筋が重要だという点です。
まだお腹が小さい初期の人は(また初産の人は特に)想像しにくいことですが、出産直前のお腹の重さは5キロほどにもなります。
これが常に、お腹の前面にあるため、どうしても背中や腰に負担がかかってしまいます。
こうなると、姿勢が悪くなる、腰や背中に痛みが出る、更に姿勢が悪くなる…と、悪循環となってしまうのです。
ですが、腹筋を鍛えておくことにより、重くなったお腹を支える力が増えるため、背中や腰の負担を軽減することが出来るのです。
また、腹筋があれば、姿勢が悪くなるのを防げるため、姿勢の悪化により起こりがちな、股関節を痛めることもなくなります。
腹筋を鍛えることで、妊娠中の三つの不調を防げる!?
また、腹筋を鍛えると、妊娠中に起こりがちな三つの不調――”冷え”、”肥満”、”便秘”を防ぐ効果が期待できます。
元々女性は妊娠・出産に備えるため、男性に比べ、筋肉よりも脂肪が付きやすい体質です。
これは生物として生存・繁殖のために必要な要素でしたが、現在の日本のように栄養価の高い食生活を出来る状況下では、悪影響でしかありません。
脂肪は体を動かすエネルギーの元ではありますが、そのものは熱を生み出しません。そればかりか、生じた熱を奪ってしまう性質があるため、何の対処もしなければ、余計に症状が悪化してしまうのです。
女性が冷えやすい、太りやすい、便秘になりやすいのも、全てこのことが原因になっており、この三つの不調は連鎖して起きることだと言っても過言ではありません。
普段からこの三つの不調は、女性にとっていい影響はありませんが、特に妊娠中の女性に関して言えば、は自分自身だけでなく、お腹の中の赤ちゃんにも悪影響を与えます。
冷えた状態の母体では、赤ちゃんが逆子になったり、十分に育つことが出来ない、早産や胎盤早期剥離の危険性が高まってしまうのです。
ですが反対に筋肉は、この脂肪をエネルギー源として動くだけでなく、動けば動くほど、そこに熱を生じさせます。
つまり、適した量の腹筋があれば、子宮が冷えてしまうこともありませんし、冷えからくる便秘も、更なる脂肪の蓄積も防ぐことが出来るのです。
妊娠中の腹筋トレーニングの注意点
ただ、妊娠中の腹筋トレーニングには、注意しなければならないことが沢山あります。
妊娠初期に腹筋を鍛えるのはNG
妊娠初期は、とてもナイーブな状態です。
この時期の流産は、大抵の場合は胎児側の染色体異常などが原因ではありますが、妊婦さんが無理をしすぎて…というケースもやはり、数多く存在します。
まして、まだ胎盤の成長も不十分な状態ですから、この時期に腹筋を鍛えることは控えましょう。
”腹筋運動”で腹筋を鍛えない
腹筋を鍛えるというと、仰向けの状態から上体のみを引き起こす腹筋運動をイメージしがちですが、これは腹筋を鍛える以上に、腹部に対して大きな圧力がかかる運動です。
ですから、例えまだお腹が出ていない時期であったとしても、絶対に腹筋運動を行ってはいけません。
もし妊娠に気付く前に腹筋運動や激しい運動をしてしまっていたとしても、その時点で体調に問題がなければ、気にすることはありません。
短時間の激しい運動で腹筋を鍛えようと思わない
妊娠していない状態であれば、短時間に集中して行う負荷運動は効果的と言えますが、妊娠中は違います。
お腹に無理な力を加えたり、激しい運動をすることは絶対に避けましょう。
必ず医師に相談してから運動を行う
妊娠中期(16週)以降から始めるにしても、必ず主治医に相談してから運動を行うようにしましょう。
その際、どんな運動ならば可能なのか、大抵の場合にはアドバイスも貰えるでしょう。
妊娠中の腹筋や体を整えるために、妊婦専用のプログラムに参加しよう
では、妊娠中の腹筋の鍛え方には、どんなものがあるのでしょうか?
一つには、スポーツクラブやヨガスタジオなどが開いている、マタニティヨガ、マタニティビクス、マタニティスイミングといった、妊婦さん向けのプログラムに参加する、という手段があります。
こうしたプログラムを用意している場所では、プロのインストラクターから直に指導を受けられますから、間違った方法で運動を続ける恐れがありません。
またこうした運動は全身の筋肉を鍛える・解す効果があります。
「でも、スポーツクラブに入会するのは自分に合うかわからないし気が引けるな」
という人もいるでしょうが、地域・自治体によっては、児童館や体育館、プールといった公営施設で教室を開いていることもあります。
このような教室であれば、参加費も安めだったり、1回ずつの参加が可能ですから、まずはこうしたものに参加してみることをおすすめします。
一度、自治体に問い合わせてみたり、ホームページなどで確認してみましょう。
マタニティクラスに参加する利点として、忘れてはいけないポイントは”同時期に出産を迎える人達が集まる”ことです。
自然と情報交換の場になりますし、何より人と接することが苦でない人ならば、いい気分転換にもなります。
逆に、そうした時間がない、人と接するのが苦手…という人であれば、DVDなどで発売されている、マタニティヨガを試してみるのもいいでしょう。
自宅で出来る腹筋トレーニングにはどんなものがある?
他にも、自宅で出来る腹筋トレーニングがあります。
クランチ型の簡易腹筋運動
- 膝を曲げた状態で仰向けになり、左か右、どちらかのお尻の下に枕やクッションを敷く
- 腕を前に伸ばし、ゆっくりと息を吐きながら手の先が膝につくところまで”頭と肩”を浮かせる
- 息を吸いながら元の状態に戻す
- 片側で5回ずつ、計10回を朝晩の2回行う
先に述べた通り、通常の腹筋運動は妊婦には禁忌ですが、膝を曲げた状態で行うクランチ型の腹筋運動であれば、さほど腹圧もかからないため効果があると言われています。
ただし、お腹が大きくなってきて、仰向けに寝転ぶのが苦しくなってきたり、お腹が張る、痛みがある時は行ってはいけません。
屈伸
- 両手を頭の後ろで組んで立ち、足は肩幅に広げる
- 息を吐きながらゆっくりと体を屈める
- 息を吸いながら元の体勢に戻す
- ゆっくりと10回程度行い、慣れてきたら回数を増やしていく
この運動は腹筋だけでなく、骨盤の歪みや、足のむくみの改善にも効果が見込めます。
バランスが取りづらい時は、壁や机など、動かないものに手をついて行いましょう。
腰回し
- 足を肩幅に広げて立ち上半身は力を抜いておく
- ゆっくりと息を吐きながら、腰を360度回す
- 逆側も同じ回数だけ回す
腰を回すことで、腰痛の緩和が期待できるほか、骨盤が開きやすくなる、股関節が柔らかくなる効果が期待できます。
妊娠中は決して無理をせず、出来る範囲で腹筋を鍛えよう
こうした運動の他にも、ウォーキングも、実は腹筋と、出産に関わる部位を鍛える効果があります。
病院でも「まずは歩いて下さい」と言われるほど、ウォーキングは重要です。
ただし、この時、ただ歩くだけではそう効果はありません。
歩いている時、骨盤の動きに意識を向けてみましょう。この時、踏み出した足と同じ側の骨盤が、しっかりと出すことを意識するのです。
不思議なもので、一度意識してみると、ただ足を出すときには気付かない、筋肉の動きが分かるようになります。
筋肉は意識すればするほど、鍛えられる性質があります。
歩くスピードはゆっくりとで構いませんから、背筋を伸ばし、骨盤と筋肉の動きを意識しつつ、普段から歩いてみましょう。
繰り返しになりますが、妊娠中の運動と腹筋の強化は、安産に向けて必要不可欠なものです。
また妊娠中から体を動かしておけば、出産後に待っている育児生活を乗り切るだけの体力も付けることが出来ます。
それでも、激しい運動をすることは絶対に控え、少しでも痛みや張りが出てきたら、その時点で運動を中止し、体を楽な体制で休まなければいけません。
また妊婦さんの体調や状態は一人ひとり違うものですから、必ず運動を始めてもいいのか、医師の指示を受けるようにしましょう。