妊娠・授乳中に摂るべきでない食品添加物とその影響とは
現在、国内に流通している加工食品や飲料には、ほぼ必ず食品添加物が使用されています。
勿論、その安全性が認められているからこそ使われているものが大多数ですが、中には妊娠中には摂取を避けたほうがいいものもあります。
健康な赤ちゃんを産み、育てるために、そうした知識は身に付けておくべきです。
妊娠中に食品添加物を取ると、本当に赤ちゃんの成長に影響が出るの?
普段、何の気なしに口にしている食事の中に、体に悪影響があるものが沢山含まれていたとしたら、あなたはどうしますか?
それが、明らかに毒物であり、ほんの一口、少量であっても影響があるなら、きっと多くの人がその食品を食べることをやめるでしょう。
しかし問題は、そうしたある意味分かりやすい影響がすぐに出ないこと、多くの人が好む味付けにする、食欲をそそる見た目(特に色)にする、そして食品の寿命を延ばすために有効である、といった理由から、こうしたものが使われた食品が、世の中に溢れかえっていることにあります。
それが”食品添加物”です。
食品添加物と聞くと、大抵の人は「あまり食べないほうがいいもの」という認識を持っているのではないでしょうか?
「体に悪いって話を聞いた」
「特にお腹の赤ちゃんに影響が出ると聞いた」
と、あまりいい印象がない言葉になっているかと思います。
しかし、そもそも食品添加物は、食材を加工して食品にする際、製造工程の中で加えられるもののことを指します。
例えば、豆腐を作る時に使われるにがりも、食品添加物の一つですし、菓子や飲料などに含まれる着色料、人工甘味料、化学調味料も同じです。
また妊娠中には特に摂取したい葉酸を始めとしたサプリメントにも、この食品添加物は使われているのです。
つまり、加工食品にはほぼ必ず食品添加物が使用されており、現代の食生活において、これらを全て排除した食事をするのは、ほぼ不可能な状況であると言えます。
粉末タイプで気軽に使える”だし”でさえ、食品添加物が使用されているのですから、本当にこうしたものを含まない料理のみを口にしようとした場合、想像以上の労力が必要になってしまうからです。
こう聞くと「じゃあ妊婦の間や、母乳育児の間は加工食品は全て食べられないってこと!?」と思う人もいるでしょうが、それは大きな間違いです。
そもそも、食品に含まれる食品添加物は、人の健康に害をなすことが分かっているものに関しては、基本的に使うことが出来ないよう、国――厚生労働省によって認可されたものしか使えないことになっています。
輸入品に関しても、同じく日本国内で禁止されているものは輸入すら出来ませんし、使用している防腐剤を始めとした食品添加物を記載しなければならないルールなども整っているのです。
ですから、”食品添加物を含んだ食品の全て”が危険であると考えるのは早計です。
では何が問題なのか、というと、まず一点目として、『食品添加物の中には、他の国では危険性が確認されているが、日本では未だ容認されているものがある』という点なのです。
(逆の場合もありますが、そうしたものは正規のルートを通る以上、日本国内に出回りません。※個人輸入を除く)
海外が過敏すぎるのか、それとも日本が遅いだけなのか、どう感じるかは人による部分もありますが、それがお母さんではなく、お腹の中の赤ちゃんのリスクが発生する可能性を考えると、「国内で売られているものだから大丈夫」とは、やはり言いきれないのが現状です。
そして二点目に挙げられるのが『食品添加物の一日の摂取許容量について、そして大量摂取を続けた時のリスクについて、多くの人が知らないままでいる』という点も、問題点であると言えます。
こちらについては、決して国や関係省庁、そして消費者である我々の怠慢、とは言い切れません。
世の中に存在する全ての食品添加物の種類とその摂取許容量(一日、一週間など、一定の期間で食べても良いとされる量)を把握している人は、一体どれほど存在するでしょうか?
相当気を配り、調べあげる余裕がある人でないと、こうしたことは難しいでしょう。
だからといって、心配しすぎて「あれもダメ、これもダメ」と、食品添加物全体を恐れてしまうのは、いいことではありません。
現在の日本で添加物なしの生活をしようとすると、逆に偏った食生活になる可能性が高く、また、特に妊娠中に必要な栄養素を得ることが出来ず、妊婦自身の健康を損ねるばかりか、胎児の発育不全を引き起こすこともあるからです。
それに無農薬・無添加・自然栽培――といった食品は他に比べて高価になりやすく、家計の圧迫の原因にもなってしまいます。
ではどうすべきか、といえば、以下の様な解決策があります。
○情報収集を怠らない
○危険性があるとされる食品添加物のみを避けるようにする
○普段の食生活を見直し、”様々な食品をバランスよく、満遍なく”食べる
○外食は最小限にし、出来る限り自炊する
この四点を意識するかしないかで、”危険な食品添加物”から自分、家族、そしてお腹の赤ちゃんを守ることが出来るのです。
重要なのは、やはり広い視野を持ち、正しい情報を選びとることだと言えるでしょう。
妊娠中に食品添加物を取ると赤ちゃんがアトピーになる?
妊娠中・授乳中の食生活によって、赤ちゃんにアトピーやアレルギーが出る可能性が高まる、という話をよく耳にしますが、実際はどうなのでしょうか?
これは、家族内――赤ちゃんにとっての両親、祖父母、兄弟にアトピー性皮膚炎の既往症がある、または何らかのアレルギー体質がある時には、特に注意すべきであると言えます。
そもそもアレルギーは、体に備わっている免疫が、本来は人体にとって無害な物質に対して間違って攻撃する、一種の免疫の機能不全です。
自分の体では処理しきれない特定の物質に対し、「これは外敵である」と過剰な防衛をすることにより、様々なアレルギー症状の引き金となるのです。
ただ、アレルギーの遺伝とは、家族と同じアレルゲンでアレルギーを発症するというものではないのです。
正しくは”アレルギー体質”というものが遺伝するのであり、何がアレルゲンになるのかは、個人差によって異なるのです。
例えば、「両親が花粉に対するアレルギー(花粉症)であると、子供も花粉症になる」、「祖父がサバアレルギーだから、隔世遺伝で孫にサバアレルギーが出た」というのではありません。
また食物アレルギーに関して言えば、例えアレルギー体質の家族がいなくても、ある一つの食品ばかりを食べ過ぎると、それに対して抗体が出来てしまう可能性が高まります。
だからこそ、様々な食品をバランスよく、食べることが重要になってくるのです。
対してアトピー(アトピー性皮膚炎)は、アレルギー反応と似通った部分があり、混同されがちですが、実際はイコールでは繋がりません。
皮膚の病気を専門に扱う学会では、アトピー性皮膚炎を”表皮(角層)の異常により、皮膚の乾燥とバリア機能の異常が引き起こされ、さらに様々な刺激によって慢性的な痒みを伴う皮膚炎”であるとしています。
噛み砕いて言うと、アトピー性皮膚炎は、”皮膚が炎症を起こしやすい体質の人”、つまり”普通の人よりも刺激に弱い肌を持つ人”が、アレルギーやストレスといった様々な原因が重なりあって、結果的に皮膚に痒みを伴う湿疹や炎症を、慢性的に発症する病気なのです。
ですから、その発症――湿疹が出るきっかけの一つがアレルギー反応である、と考えれば間違いではありません。
アトピーに関しては、まだはっきりとした発症原因は特定されていませんが、アトピーもアレルギーも、どちらもその体質が遺伝することが、一番の発症理由であると言えます。
そして、その発症を早めたり、症状を悪化させる恐れがあるものが、一部の食品添加物になります。
特に食品添加物の中でも、天然のものよりも人工のもののほうが、アトピーやアレルギーの発症原因になる可能性が高いことがわかっています。
家族にアトピーやアレルギーを持つ人がいる場合は、出来る限り、食品添加物を摂らない食生活を、普段から送っておくことが重要です。
特に仕事が忙しいからと、普段からコンビニのお弁当や、ファストフード、手軽に食べられる惣菜パン――と偏った食生活を続けている人ほど、食品添加物の過剰摂取に陥りやすく、妊娠に関わらず、自分自身の発症の可能性が高めることになります。
勿論、全てのコンビニ食品や、売られているものが有害だとは言い切れません。しかし、こうしたものは栄養的に見ても、塩分やカロリーが高めだったりしますから、妊活中、妊娠中、授乳中には避けたほうがいいと言えます。
是非、そうした食生活を見直すようにしましょう。
あと一つ、ネット上の質問掲示板でよく見る質問の中に「赤ちゃんにアトピーや食物アレルギーを発症させないために、何ヶ月頃から食生活に気をつけるべき?」といったものを見かけます。
これに関しては、一番ベストなのは”妊娠前から”であると言えます。
妊婦生活が始まってから急に食生活を変更しようとすると、つわりやマタニティブルーなどの身体の疲れに、更に食生活の急激な変化というストレスが加わることになります。
ですから、妊活中であるならば、その時期から添加物の少ない食事を作ることを心がけるのがいいでしょう。そして既に妊娠しているのであれば、今後の食生活の見直しを、段階を踏んで進めていくといいでしょう。
「妊娠八ヶ月目に入ったら、牛乳や卵を食べないほうがいいと聞いたけど…」
との声もありますが、これは胎児の免疫が整うのが、妊娠28週目あたりからであり、胎児のうちから食物アレルギーのリスクを下げるためです。
ですが、普段の食生活から完全にこれらを食事から除去するのは、とても難しいことです。
神経質になって、完全に除去しようとするのではなく、あくまで食べ過ぎないこと、そして他の食品も満遍なく食べる、という姿勢のほうが、妊婦さん自身のためにも重要です。
妊娠に悪影響がある食品添加物にはどんな種類があるの?
では、妊娠中に特に摂取に気をつけたい食品添加物を、種類別に見てみましょう。
○着色料
・赤色2号(アマランス)、赤色3号(エリスロシン)、赤色40号(アルラレッドAC)、赤色106号(ローズベンガル)
・コチニール色素
使用例)表面が赤いかまぼこ、イチゴ味のお菓子、ハムやソーセージ、ウインナーなどの赤/ピンク色の食品
・黄色4号、黄色5号
使用例)たくあん、数の子、瓶詰めうに、オレンジ味のジュース・菓子などの鮮やかな黄色/オレンジ色の食品
・カラメル色素
使用例)醤油・ソースなどの調味料、炭酸飲料やアルコール飲料等の濃い茶色の食品
着色料はご想像の通り、鮮やかな色を付けるためのものです。
その中でも食品に使用できるものは限られていますが、上記に挙げたものに関しては、発がん性、喘息・アレルギーの発症リスクの増加、胎児の染色体異常やダウン症発症のリスク増加などが懸念されています。
ここで少し注意が必要なのは、”危険性を含む着色料は、合成・天然に関わらず存在する”という点です。
鮮やかな赤色を出すコチニール色素は、コチニールカイガラムシと呼ばれる昆虫が原料です。
ショックを受ける方もいるでしょうが、化学的に合成したものではありませんから、れっきとした”天然色素”であり、世界中で食品に、化粧品にと使用されている着色料です。
このコチニール色素の問題点は、その原料が昆虫であることではありません。稀ではあると言われていますが、アレルギーを発症する可能性があるのです。
また”着色料は色だけではなく味を付けるためにも使われる”ということも、気をつけたい点と言えるでしょう。
多くの食品や飲料、調味料に使われるカラメル色素がそれに当たります。
カラメル色素は、本来”カラメル”=”砂糖や糖類を煮詰めて少し焦がした状態のもの”です。
お菓子作りが好きな方であれば、プリンを自分で作る際、砂糖を煮溶かしてカラメルを作ることもあるでしょうから、イメージしやすいでしょう。
この、甘く苦い味わいがその商品の特色になっている食品が、世の中には沢山あるのです。
しかし、このカラメル色素についてもう少し言及するならば、その製法・原料によっては発がん性の危険があるばかりか、免疫機能の低下や染色体異常の原因になるなど、胎児にとって危険な物質であること、そして”製法・原料について、食品の原材料の部分に記載する必要がない”、という問題があるのです。
普通の消費者がこの違いを知ろうとしても、残念ながらそれは簡単なことではありません。
○甘味料
・アスパルテーム、スクラロース、キシリトール 等の人工甘味料
使用例)シュガーレス、カロリーオフの飲料、ガムなどのお菓子
普段口にする飲料やお菓子に入っている人工甘味料の中には、特に妊娠中に摂取することに気をつけなければならないものがあります。
それが”アスパルテーム”という甘味料です。
この甘味料は、同量の砂糖よりも二百倍近い甘みがありつつカロリーがない、つまり人間が消化吸収できないものであるため、ダイエット効果があると言われているものです。
しかも安価であるため、これを使った商品はどんどん増えていく傾向があります。
ただ、舌は甘みを感じるのに、実際は砂糖のように糖分として吸収され、カロリーとして使われることがありません。
したがって、本当に糖分を必要としている脳が混乱し、その機能の低下が起き、頭痛、めまい、気分の落ち込みやうつ状態に陥る可能性があります。
他にも、糖尿病や、肝臓や胃といった内臓に障害が発生するリスクが高まるといった指摘をする研究者も存在します。
しかし問題はこれに留まりません。このアスパルテームが体内で分解される時に生成される必須アミノ酸の”フェニルアラニン”に、一番の問題があるのです。
このフェニルアラニンという物質に聞き覚えがある方は少ないでしょうが、先天的な代謝異常疾患の一つ”フェニルケトン尿症”に、この物質は深く関わっています。
フェニルケトン尿症は、フェニルアラニンが分解できずに体内に蓄積され、治療をしなければ結果的に脳に障害が起きる病気です。
発症率こそ八万人に一人という確率ですが、治療の遅れが確実に脳の障害に繋がるため、現在日本では生後すぐ、退院前に検査される項目の一つでもあります。
先天的な病気ですから、胎児の段階で既に発症しているため、母親がこのアスパルテームを摂取した場合、胎盤を通じて赤ちゃんがこれを受け取ってしまい、脳の発達に大きな影響を与えてしまうのです。
赤ちゃんがフェニルケトン尿症であるかは、生まれてからの検査でしか判断できません。
ですから、”もしも”のためにも、妊娠中は特にこの甘味料について、忌避する必要があるのです。
またスクラロース、キシリトールといった人工甘味料も、人によっては腹痛や下痢を起こすことが分かっています。
そのものが胎児に影響を及ぼす可能性があるアスパルテームとは違いますが、激しい下痢は、妊娠初期の場合、時に流産を起こす原因にもなりますから、普段からお腹がゆるくなりがちな人は、気をつけるべきと言えます。
○防腐剤・防カビ剤・保存料・酸化防止剤
・安息香酸ナトリウム
・パラオキシ安息香酸
使用例)清涼飲料水、調味料などの長期保存が可能な飲食物の防腐剤
・チアベンダゾール(TBZ)
・オルトフェニールフェノール(OPP)
使用例)輸入フルーツなど、長期輸送中の防カビ剤
・ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)
・エチレンジアミン四酢酸(EDTA)
使用例)菓子、バター、ガム等、酸素に触れることで味が劣化する食品の酸化防止剤
・亜硝酸ナトリウム
使用例)ハム、ソーセージ等の防腐剤、ドライフルーツ等の発色剤
これ等は、発がん性や、胎児の染色体異常、口蓋裂などの奇形リスク、遺伝子損傷性のリスクが高くなると言われています。
ですから、あまりに賞味期限や消費期限が長いものは、便利ではありますが避けたほうがいいでしょう。
ここで注意したいのが、亜硫酸ナトリウムに加え、”ソルビン酸”という添加物が一緒に入っている食材です。
この二つは一緒に摂取すると、胎児への奇形リスクが上昇する”複合毒性”を起こすことが分かっているからです。
一つ一つでは問題がない添加物でも、同時に摂取することで毒性が発生する・高まる食品添加物もあることにも注意を払いましょう。
○乳化剤・増粘剤・凝固剤
・ショ糖脂肪酸エステル
使用例)パン、マーガリンなどの乳化剤・増粘剤、サプリメントなどの凝固剤
ショ糖脂肪酸エステルは乳化剤、増粘剤、凝固剤として、多くの加工食品に含まれています。
しかし、妊娠を望む女性、そして妊娠中、授乳中の女性にとって強い味方である葉酸サプリを始めとした、数多くのサプリメントにも、このショ糖脂肪酸エステルが使われているのです。
危険性やその可能性は限りなく低いと言われていますが、染色体異常や胎児の奇形のリスクが高くなる可能性があり、例え”妊娠中の女性に”とうたわれていたとしても、これが含まれているサプリメントは選ぶべきではないでしょう。
最後になりますが、決して、世の中の加工食品に使われている全ての食品添加物が”悪いもの”ではありません。
そして、普通に食べる分であれば、お母さんにも、お腹の赤ちゃんにも、影響が出ることもほとんどありません。
ただ、水銀などの有害金属の摂取量を気にするのであれば、それと同等の危険性がある食品添加物の摂取量についても、もう一度考えなおしてみる必要が、消費者にもあるのではないでしょうか。