葉酸の吸収をカフェインが阻害? 妊娠中に適した飲み物とは
妊娠授乳期の女性にカフェインの摂取は適さないことは、もう多くの人が知っていることでしょう。
ただ適量であれば大丈夫、とは言いつつ、それでも飲むタイミングによっては葉酸や鉄分の吸収を阻害してしまうので、やはり妊娠・授乳中であるなら、適している飲み物――”カフェインレス”のものを選ぶのがいいでしょう。
<h2>抹茶なら葉酸も摂れるから別? カフェインが妊娠に与える影響とは</h2>
妊娠中は、妊婦が食べた栄養素が赤ちゃんに流れてしまいますから、とにかく口に入れるものには注意したいものです。
アルコールや煙草は勿論のこととして、その食品に含まれる様々な成分(時には栄養素にも)が、胎児に悪い影響を起こすこともあるため、妊娠に気付いた時から、女性はとにかく、食品や飲み物といった、口に入れるものについて、気を配るべきでしょう。
そんな中、よく挙げられるものがビタミンAですね。
ビタミンAは、妊娠初期と妊娠後期に過剰摂取をすると、胎児の奇形率が高くなることがわかっています。
しかし、まったく摂らないのも問題で、不足した場合にも奇形や成長障害が発生することもあり、とても厄介な栄養素です。
摂り過ぎない、そして不足させない。”何事も適量”が第一だと言えますね。
と、ここで気になるのが、”カフェイン”の存在です。
ご存知の通り、カフェインはコーヒーを始めとした飲み物や、チョコレートなどの食品にも含まれる成分で、眠気覚ましや興奮剤としての効果があります。
栄養補給のために飲む栄養ドリンクや、薬局で売られている栄養剤や鎮痛剤の中にも、”無水カフェイン”(カフェインから水素が除去された形のものであり、実質は変わりません)という形で含有されていることからも、その効果のほどが伺えますね。
しかし、カフェインは同時に、いくつもの弊害を持っている成分であることも、忘れてはいけない点です。
健康な大人であっても、一日に大量に摂取すると、中毒症状を起こすことが分かっています。
特に、子宮内膜症などの婦人科系の病気を抱えている人、そして、妊娠授乳期の女性は、可能な限り避けるべきとされています。
そもそも、カフェインの摂取に関しては、健康な人でも注意を払う必要があります。
その理由は、カフェインが脳の交感神経に働きかける物質だからです。
カフェインは交感神経を、強制的に活性化させる効果があります。眠気覚まし、疲労の回復、思考が冴えるなどのプラスの効果が出るのはこのためです。
しかし、この交感神経の強制的な活性化は、胃腸などの消化器への負担の増大(胃痛など)、睡眠障害などの自律神経の不調、筋肉の硬直とそれによる血流の阻害が生じ、肩こりなどの発症や、子宮内膜の状態を悪くするなどマイナスの効果をもたらしてしまうのです。
また最近の研究では、カフェインの摂取により、卵管の筋肉の動きが弱まってしまっていることが、不妊の原因の1つである可能性が示唆されていることもあり、妊活中の女性にとっても、決して摂り過ぎていい成分ではないと言えます。
そして特に、妊娠授乳期の女性がカフェインを避けなければならないのかというと、カフェインは胎盤や母乳を通して赤ちゃんに届いてしまう成分であることが問題なのです。
まだ脳や内臓、体そのものが未熟な胎児にとって、カフェインの負担は重すぎ、大人がそうするように、尿で排出する機能が未熟であり、長期間その影響を受けてしまいます。そうなると、体の発育に影を落とす可能性があります。
もう一つ、胎盤に渡る血流も、カフェインの効果によって阻害されるため、必要な栄養素が赤ちゃんに届かずに発育不良を起こす可能性も無視できません。
そして出生後も、母乳からカフェインを受け取ってしまうと、興奮状態になって泣き止まない、眠らないといった状態になり、時に乳幼児突然死症候群のリスクを高めることもあるのです。
ですから、可能であれば、妊娠授乳期の女性は、カフェインは摂らないに越したことがないのです。
しかし、それまで恒常的にカフェインを口にする機会が多かった人にとって、全くこれ等を口にしない、というのはとても難しい問題です。
勿論、そのリスクを考えれば、全く口にしないことが正しい選択であることは明白です。
しかし、例えば朝食やランチの後に一杯、コーヒー、緑茶、紅茶などを口にして、気分転換をするのが日課だった人にとって、妊娠したからと我慢すると、逆にストレスがたまることもあるため、妊婦自身や胎児に影響がない程度――”1日に1、2杯であればよい”とされています。
では、実際にどれほどの量であるべきか、というとWHO(世界保健機構)の定める数値は”1日に300mg”であり、日本でもこの数値を目安にしています。(ただし、欧米諸国の中には、200mgと少なめに設定している国もあります)
対して、一般的な飲み物に含まれるカフェインの含有量はというと、、カップ一杯150mlあたり、コーヒーで150mg、紅茶で75mg、煎茶で50mg程度です。
ただしこの含有量は、いれ方や飲み物の濃さによっても上下しますから、あくまで一般的な目安と考えてください。
コーヒーでもインスタントコーヒーならば100mg程度ですし、逆にエスプレッソになると、100mlで200mgを超えてしまいます。
また緑茶という括りで考えがちな玉露も、他の緑茶(一般的には煎茶)と比べても、なんと1杯あたり180mgと、飛び抜けて高い含有量を示すためです。
さて、インターネット上などで、こんな意見を目にしたことはありませんか?
「抹茶であれば、カフェインも低めだし、同時に葉酸も摂れるから大丈夫」という声です。
飲み物の抹茶そのものや、牛乳で割ったラテ、そして食品の抹茶味を好む女性は多いですし、商品も沢山目にする機会があります。
そしてそもそも抹茶は茶葉の粉であるため、妊娠初期の女性が特に摂取すべき葉酸も、そのまま摂取できるのが利点のように感じます。
抹茶に含まれるカフェインの量は1杯あたり50mgと少なめで、対して葉酸の量は20μg程です。
単純計算をすれば、抹茶はWHO基準でも6杯、そして葉酸は120μg摂れる!――と考えたくなりますが、残念ながらそう上手くは行ってくれません。
何故なら、カフェインには、葉酸のみならず、他の栄養素や医療用の薬やサプリメントの成分の吸収を妨げる効果があるからです。
ですから、「葉酸が摂れる抹茶は別」とは考えず、あくまで1日のカフェイン摂取量を目安にしましょう。
<h2>コーヒーを飲むタイミングで葉酸の吸収をカフェインが阻害する!</h2>
妊娠授乳期の女性に必要不可欠な葉酸ですが、このサプリメントを効率よく摂取するためには、タイミングが重要です。
先に触れたとおり、カフェインは葉酸の吸収を妨げる効果があるため、コーヒーやお茶といった、手元にある飲み物で飲んでしまいがちですが、これは避けましょう。
そして、葉酸自体を体に十分に吸収させるためには、食後が一番効果的です。
が、食後は口をさっぱりさせたり、気分を入れ替えるために飲み物を飲みたいと思う人も多いでしょう。
ですから、そんな時は3つの飲み方があります
<ul>
<li>サプリメントを食前に飲み、食後にコーヒーなどを飲む</li>
<li>お茶やコーヒーを飲む時間を食事の時間とずらす</li>
<li>コーヒーやお茶をカフェインレスのものに置き換える</li>
</ul>
まず1つ目の飲み方ですが、これはやはり、葉酸のみならず、食事の栄養素の吸収率を考えても、あまりお勧めはできない方法です。
いくらサプリメントを飲んでも、その吸収を自分で阻害するのは、いい方法とは言えないからです。
どうしても我慢できない!という場合にのみこの方法を取るのもいいでしょうが、妊娠授乳期に必要な鉄分の吸収も阻害しますから、その点はよく考えて飲むようにしましょう。
余談ですが、烏龍茶などに含まれる”タンニン”という成分は、鉄と化合して”タンニン鉄”になりやすい成分です。
また緑茶に含まれる、抗酸化作用のある”カテキン”も、酸化すると、このタンニンへと変化します。
タンニン鉄は人にとって吸収が特に難しい成分ですので、貧血がきになるのであれば、カフェインの点から見ても、緑茶や烏龍茶などカテキン・タンニンが多く含まれるものは避けましょう。
続いて2つ目の飲み方の、食事とずらした時間に飲む方法です。
こちらは、適量であれば、心身のリラックス効果も期待できますし、食後から最低でも1時間、可能ならば2、3時間ずれて飲めば、消化吸収の妨げにもなりません。
ちょうど昼食と夕食の間の”おやつの時間”に、1杯のコーヒーやお茶でリラックスタイムを作るのもいいでしょう。
勿論、飲み過ぎやお菓子の食べ過ぎは、別の要因(肥満など)に繋がりますから、あくまで適量、です。
それでも、やっぱりカフェインの悪影響が出ないか心配、というのであれば、やはりカフェインレスやデカフェと呼ばれる、カフェインを除いたコーヒーや紅茶を飲むか、全く別の飲み物に切り替える、3つ目の飲み方がお勧めです。
現在は、”妊婦用”や”授乳中のママに”といったポップがついたものも、一般的なスーパーでもよく目にするため、知っている方もいるのではないでしょうか?
そして嬉しいことに、現在はこうしたカフェインレスの飲み物は、インスタントやティーバッグ、ペットボトル飲料まで増えてきています。
こうした物を、今までの飲み物と置き換えるのが、一番安心・安全と言えるでしょう。
代表的なカフェインレスの飲み物は、以下の通りです。
<h3>たんぽぽ茶、タンポポコーヒー</h3>
タンポポの根を焙煎したお茶で、コーヒーのような味があり、妊娠授乳期の女性に必須な鉄分も豊富
利尿作用があり、妊娠中のむくみの改善、血流の改善にも効果がある
婦人科系の病気や不調の改善効果がある
ティーパックタイプで売られているものもあるため、簡単にいれて飲めるのも○
但し、血圧を下げる効果があるため、低血圧の人は注意が必要
<h3>ルイボスティー</h3>
南アフリカに生息するルイボスという名前の木の葉から作られるお茶
紅茶よりもクセも渋みも少なく、さっぱりと飲みやすい味
大手飲料メーカーからもペットボトルで販売されており、またティーパックタイプの商品も一般的なスーパーで手に入るため気軽に試せる
もし苦味が強いと感じたら、牛乳と一緒に煮込み、チャイとして飲む方法もお勧め
<h3>麦茶</h3>
日本人が一番親しみやすく、手軽に試せるノンカフェイン飲料
ティーパックタイプのうち、水出し(お湯で煮出す必要のないもの)も多くあるため、作るのも簡単
さっぱりした香りなので、つわりのひどい時期にも飲め、かつミネラルを多く含むタイプもお勧め
※ただし、ハトムギ茶は含みません(後述)
もう一つ、カフェインレス・デカフェといえばハーブティーでは?と思う方もいるでしょう。
確かに、ハーブティーもカフェインレスですし、言ってみればタンポポ茶やルイボスティーも、このハーブティーに含まれます。
ただ、ハーブの中には妊婦には禁忌とされている種類のものがあるため、しっかり調べてから飲む必要があります。
特に注意したいのは、”セントジョーンズワート”、”ハトムギ”、”カモミール”、”アロエ”、”ベニバナ”は、どれも子宮収縮効果があるため、妊娠中は特に飲んではいけないものだと言えます。
また、出産直前の女性にお勧めだとされる”ラズベリーリーフ”も、同じく子宮収縮効果があるため、妊娠初期には禁忌です。
ハーブティーの中には、飲みやすさや香りを重視し、複数のハーブを組み合わせたハーブティーもありますから、何が入っているか分からないハーブティーには手を出さないほうがいいでしょう。
妊娠授乳期はアレも駄目、コレも駄目、ということが多すぎてげんなり…という話は珍しいものではありません。
ですから、自分にあった方法を見つけ、上手にこの時期を乗り越えましょう。