発育が早い?遅い? 6ヶ月頃から始まる赤ちゃんのずりばい
生後6ヶ月を過ぎた頃から、赤ちゃんは自分で体を動かすことに興味を持ち出すようになります。
特に”ずりばい”は、ほとんどの赤ちゃんが、初めて”自分で移動する”方法として取る行動です。
そんな赤ちゃんの発育を、親はどのように見守ればいいのでしょうか?
このページの目次
6ヶ月の赤ちゃんの見せる行動 ずりばいは何ヶ月からが普通?
生まれて間もない赤ちゃんは、だっこで移動している時に見る・自分が寝かされている場所の周囲の風景が、”世界の全て”の状態です。
やがて、ゴロンと寝返りをうち、ずりばいを始めると――まさしく世界は一変!
自分の体を動かせば、周囲の景色は変わり、どんなに触りたくても手が届かなかったものにさえ手が届く!そして”体を動かすことの楽しさ”と言ったら、まさに言葉に表せないほどの感動!
…と、赤ちゃん自身が思っているかは分かりませんが、ずりばいを始めた赤ちゃんの様子を見ていると、その楽しそうな様子に、お父さん・お母さんもニコニコしてしまうものです。
生後6ヶ月前後になると、今までは、されるがままだった生活から、自分の意志で動くことを徐々に始めるようになります。ずりばいもこのうちの一つ。
自分の体を動かして、興味があることに自分から手を伸ばしに行くのは、赤ちゃんの自我が育っていることの象徴と言えます。
他にも、例えばおもちゃの好みが出てきたり、声を出すことを覚えたり、人見知りが始まるなど、”個性”が見え始める時期とも言えるのです。
ただ、この”6ヶ月”・”生後半年”という言葉は、親御さんにとって心配になることがいっぱいの時期でもあります。
そもそも、赤ちゃんのずりばいってどんな行動?
そもそも”ずりばい”とは”はいはい”の一歩手前の、お腹を地面につけた状態で、両手・両足の力で前後に移動することを指します。いわゆる”匍匐前進”ですね。
両腕を移動力のメインにするか、それとも足の力の方が強いのか、前と後ろのどちらに進むかといったことは、赤ちゃんそれぞれで違いがあります。
ずりばいは、赤ちゃんの筋肉を発達させるために必要な動作です。
親御さんからも想像がつく通り、生まれてからこれまでの赤ちゃんの腕や足の動きは、何かを掴んだり、振ったりする程度に使うぐらいで、自分の体重をかけることはほとんどありませんでした。
そして腕や足だけでなく、体全体の筋肉も、ただ寝かされるだけでほとんど使っていなかったため、体を起こす動作すら、この時期に赤ちゃんにはままならないものです。
ですから、赤ちゃんの寝返りや、一人座りから始まる一連の動作は、赤ちゃんが自身で筋トレをしているのだ、とも言えるのです。
こうした体の発育は、体に必要な筋肉を付けるためだけではありません。
体を動かすことにより、赤ちゃんの体は気管支や消化器などの発達や、免疫力の向上、そして脳の発達にも関わってきます。
「ボケ防止には手先を使う作業をするといい」と言われますが、これは赤ちゃんにも言えることです。
指や手、足を使うことは、それが当たり前の大人には考えつかないほど、赤ちゃんの脳の動きを活発にする動作なのです。
赤ちゃんがこんな仕草を始めたら、ずりばいの合図!
ずりばい・はいはいに進むまでには、赤ちゃんの体は段階を踏んで成長していきます。
まず、首が座り、寝返りを打ちます。
その後、うつぶせの状態で、背中を反らして、上半身を起こせるようになります。
そして、腕の力を使って上半身を支え、今度は一人ずわりが出来るようになります。
この後に、ずりばいがはじまり、やがてはいはいへと移行し、つかまり立ち、ひとり立ち、歩き出し…と続きます。
ただ、先にも述べた通り、そうすることに必要な筋肉はまだ発達途上ですし、どうすればいいのか分からない、という赤ちゃんも存在します。
そんな時は、決して無理にではなく、遊びながら・あやしながら、その方法を親御さんが見せてあげたり、少し助けてあげるといいでしょう。
ずりばいをしようとしている仕草としてよく挙げられるのが、”うつぶせの状態で手足をばたつかせている時”です。
こんな時は、赤ちゃんの足の裏に手を添えてあげて、蹴る練習のお手伝いをしてあげるといいでしょう。
”足の裏で蹴る”という動作には、足の指、ふくらはぎ、太もも、そして腰の筋肉を使います。使うことで、赤ちゃんは動かし方を学んでいきます。
しかし、腕を引っ張ったり、膝を曲げさせるなどの補助は、関節を痛めたり、脱臼を起こすことがあるため避けましょう。
無理に動かすよりも、親御さんが目の前で”実演”するほうが、赤ちゃんの練習には有効です。
なかなか前に進めなくても、焦る必要はありません。
それでも気になる、不安に思うのであれば、小児科の医師や保健師に相談するといいでしょう。
赤ちゃんがずりばいを始めたら、家の中は危険がいっぱい!
ずりばいが始まると、赤ちゃんの世界は急激な広がりを見せます。
と同時に、親御さんにとっては赤ちゃんの好奇心との戦いになります。
今まで見たことのないもの、触ったことのないものが視界に入ると、赤ちゃんがそちらに向かってズリズリと猛突進!という姿が日常茶飯時になります。
筆者の家では猫を飼っているのですが、この猫に向かってとてつもない速さで突進し、びっくりした猫が逃げる…という光景が一日に何度も繰り返し見えました。
一見微笑ましいエピソードに思えるかもしれませんが、この赤ちゃんの好奇心の強さは、時に思わぬ事故、そして怪我を招きかねません。
筆者宅のように、猫を飼っている家では、猫のトイレの砂に手を出し、飲み込んでしまう可能性がありますし、猫の性格によっては爪で大怪我をする可能性もあります。
ペットがいないお宅でも、コンセント、携帯電話のケーブル、本棚、洋服のベルト、買い物袋、テレビのコントローラーと中の電池…と、身の回りにある全てのものが危険物に変わってしまう可能性が否定出来ないのです。
ずりばいの始まった頃の赤ちゃんに「そこは触ってはダメ」「これは触ってもいい」という言い聞かせは、まず通用しません。
ですから、家族側が、赤ちゃんの成長に合わせ、家具の配置や生活習慣の見直しが絶対に必要になります。
赤ちゃんが動きまわる前に、住環境をもう一度見なおして
まず、大人しか触ってはいけないものは、赤ちゃんの目線が通らない場所に置くことが重要です。
特に携帯電話やコントローラーのような、大人がよく触るものや、触ったことで何か別の現象が起きるものは、興味を惹かないわけがありません。
ですから、代わりになるようなおもちゃを用意したり、そもそも見えない場所に置いて、見えないように操作するなどの配慮が必要になってきます。
高い棚に置いたから大丈夫、とも言い切れません。
ずりばいを始めた頃は触れなくても、赤ちゃんの成長はとても早く、あれよという間に今度はつかまり立ちを始めます。
こんな時、不安定な棚などがあった場合、最悪な事故が起きることもあり得ますから、安定しない家具の置き場所や、倒れるのを防ぐ金具を取り付ける、触られたくないもののある場所には柵を設ける――といった対処も必要です。
「ずりばい・はいはいのうちは大丈夫」だとは、絶対に言い切れません。多くの事故は「まさか」という状況で起きているのです。
早め早めに、赤ちゃんを事故から守るグッズで防止策を取るなど、対処を心がけましょう。
そして、忘れてはいけないのが、掃除です。
特に、床に落ちている・置いているものは、口に含んでしまう可能性が高いため、こまめに掃除を行い、赤ちゃんが異物を誤飲することがないようにしましょう。
6ヶ月頃から気になる、他の赤ちゃんとの発育の違い
さて、こうした赤ちゃんの発育ですが、親御さんが持っている母子手帳にも、首すわり・寝返り・ひとりすわり・はいはい・つかまり立ちがいつ頃から出来るようになるか、という線や矢印が引かれています。
――と、ここで、多くの親御さんが頭を悩ませる問題が発生します。
「まだ6ヶ月なのに、もうはいはいをしている」
「この子はもう6ヶ月を過ぎたのに、寝返りをしない」
といった、”周囲の同じ月齢の子や母子手帳にある発育の目安に比べ、発育が早い・遅い”という点です。
かく言う私も、そんな親の一人です。
同じ月齢の子に見られる発育が、自分の子供にまだ見られないと「うちの子、大丈夫?」と不安になって、インターネットの情報を必死になって調べて「大丈夫」「個人差です」の言葉に安堵…を、未だに繰り返しています。
実際、私の子供が寝返りをうったのは、7ヶ月に入ってからのことでしたし、6ヶ月検診では発育曲線は範囲ギリギリで「栄養状態:要指導」の文字にショックを受けたものです。
他の同じ月齢の子を見かける度に心配になり、母子手帳の目安を見ては不安になり、人の「まだ○○しないんだ」という言葉に傷つく…。こうした人は、非常に、本当に多いのです。
発育の進み方は、赤ちゃんそれぞれ!不安を抱えすぎないで
赤ちゃんの発育状態は、どんなお母さん・お父さんにとっても心配な事柄です。
特に”○○が早い・遅い”という事柄に関しては、心配にならない親御さんは存在しないでしょう。
しかし、結論から言ってしまうと
”発育の目安は人それぞれ。必ずばらつきがあるもの”なのです。
例えば兄弟間でも違いますし、児童館や保育園などで顔を合わせる同じ月齢の子であっても、確実に違います。
母子手帳に描かれている”○○の目安”は、「約9割の子供ができるようになるもの」という但し書きがされているように、本当に単なる目安、参考でしかありません。
その枠の中に収まっていなくても、健康であるならばそれはその子のペースです。
人間一人一人を比べると、身長・体重、外見、性格、好きなもの、嫌いなもの、得意なこと、不得意なこと…と人それぞれ違いますよね?
発育の状況も、これと同じことなのです。
一番よくないのは、まだ体や心が整っていない赤ちゃんに、無理に何かをさせようとすることです。
本人が、例えばずりばいをしたそうな仕草をし、きっかけをつかもうとしているのならまだしも、泣いている赤ちゃんを無理に腹ばいに寝かせ、はいはいをさせようとすることの、何処に正当性があるのでしょう。
特に6ヶ月という月齢ならば、子供一人ひとりに個性が出てくる時期なのですから、どうか、親御さんも不安を抱えすぎないよう、ゆっくり見守ってあげましょう。