生理予定日に出血アリ。でも検査薬は陽性 疾患の可能性アリ
妊娠検査薬の陽性反応がある場合は、ほぼ間違いなく妊娠している!と言われるほど、その判定結果は信頼されています。
しかし、その検査薬は陽性なのに、生理予定日付近に出血があった場合、どんなことが疑われるのでしょうか?
このページの目次
生理予定日付近に出血あり… 陽性でも妊娠ではない?
女性のライフスタイルを一変させる出来事はいくつかありますが、中でも一番大きいイベントと言えば妊娠でしょう。
結婚も重大なイベントではありますが、それでも、自分の中に新しい命が宿るという現象は、結婚に付随する様々な要素よりもずっと重要で、また文字通りその後の生活を一変させる出来事です。
その成否を早く、そして確実に知りたいと思った時、手軽に使える頼もしい味方として登場するのが妊娠検査薬ですね。
尿をかけて1分〜数分ほど待つだけで、こっそりと、そして安価で妊娠の有無が確認出来ることから、「もしかしたら妊娠したのかも」と感じたり「早く妊娠したい!」と願う女性ならば、一度は手にとったことがあるでしょう。
また、その判定結果はほぼ間違いない、と言われるほどであり、今ではほとんどの女性が、検査薬で陽性が確認できてから産婦人科へ向かうのが、セオリーとなっています。
ただ、検査薬で陽性反応が出たにも関わらず、生理予定日に出血があった時は、検査薬が間違いだったのか、それとも何か妊娠に問題が発生したのではないか…と、とにかく不安になることでしょう。
そうした出血は何故起きるのか、そしてどんな場合は注意が必要なのかを見ていきましょう。
そもそも妊娠検査薬の陽性判定は信頼性があるのか
まずそもそも、妊娠検査薬の判定結果は、どの程度まで信頼できるものなのでしょうか。
”検査薬で決められた時期に検査を行って陽性が出た場合は、ほぼ100%で妊娠している”と言っても過言ではありません。
検査薬で陽性が出たことを産婦人科で告げたところ、本来は行うはずの尿検査を飛ばしてエコー検査を行った、という体験談もあるほどです。
(実際、筆者もその体験をした一人で、初診の産婦人科であったものの、受付でその旨を伝えた時点で「尿検査は必要ないですね」と言われ、省略されました)
何故そこまで、妊娠検査薬に対する信頼が厚いのかと言うと、検査薬が判定に使っている”ある物質”に、その理由があります。
その名も”hGCホルモン”、正式名称を”ヒト絨毛性ゴナドトロピン”という物質です。
何だか名前からはどんなものか想像し辛いかと思いますが、実はこのホルモン、通常、”妊娠した時のみ体内に発生するホルモン”なのです。
このホルモンが体内に発生するのは、排卵そして受精から、どんなに早くても9日の時間を要します。
何故なら、”着床した受精卵の絨毛およびそこから生成される胎盤”からしか分泌されないものだからです。
受精しても着床出来なかった場合には、体内に存在すらしません。
ですから、このhCGホルモンが尿に出るのであれば、”ほぼ確実に”妊娠したと言えるため、検査薬の結果が信頼されるのです。
信頼性のある検査薬が陽性なのに、妊娠ではない?
ご存知の通り、女性の卵巣から排卵された卵子は、男性側の精子と出会うことで受精し、受精卵となります。
卵子の寿命は排卵から24時間ほどであり、更に受精に適しているのは6時間程度の時間です。
この時間内に精子と出会わないと妊娠が叶わないのですが、通常、この2つが出会うのは卵管と呼ばれる器官内です。
晴れて卵管で受精し、受精卵となった卵子は、細胞分裂を繰り返しながら、卵管の中をゆっくりと運ばれていき、子宮へと到達します。
ここでもしばらくの間細胞分裂を繰り返すのですが、まだ着床(つまりは妊娠)していません。未だ子宮内を漂っている状態です。
受精から7日目になると、受精卵はその表面に絨毛を作り出し、この組織が子宮内膜に根を下ろします。これでやっと着床、妊娠した状態になるのです。
そうして着床した受精卵が子宮内膜の中に潜り込み、9日目になって初めてhCGホルモンが発生します。
ここまで聞くと「では何故、陽性反応が出ても”100%妊娠”と言い切れないの?」と気になるところですね。
その理由には、”妊娠にかかわる3つの疾患”の場合にも、このhCGホルモンが分泌されることに起因します。
そしてこの3つの疾患こそ、”妊娠検査薬で陽性なのに出血がある”状態を起こす原因と成り得るのです。
生理予定日の出血 一番に考えられる疾患はどんなもの?
妊娠検査薬が陽性なのに、出血がある――この状況で疑われる3つの疾患は
- 子宮外妊娠
- 胞状奇胎
- 流産
です。
それぞれを細かく見ていきましょう。
子宮外妊娠
これは言葉の通り、受精卵が上手く子宮内に運ばれず、別の場所――卵管や、卵巣、腹膜や筋肉部、そして子宮頚管などに根付いてしまう、つまり”子宮以外の場所に受精卵が着床してしまった”状態を示します。
中でも一番多いのが、卵管妊娠で、子宮外妊娠のうちの98%にも及びます。
この疾患が起きる原因は、以下の様なものが挙げられます。
- 何らかの疾患で卵管が詰まり、受精卵が移動できなかった
- 排卵された卵子が上手く卵管に運ばれないまま、卵管以外の場所で受精
- 成長してしまった
- 中絶経験などにより子宮に問題が生じ、受精卵が子宮内に留まれなかった
着床した場所に関わらず、この妊娠を継続することは、残念ながら不可能です。
そればかりか、恐ろしいことに、受精卵自体は正常であるため、着床した場所に関わらず、そのまま成長を続けてしまうことです(hCGホルモンが分泌されるのもこのためです)。
子宮以外の場所は、成長した受精卵を受け止め続けることは出来ませんから、出血や下腹部痛といった異常が発生します。
始めのうちは出血も痛みも僅かですが、これを放置すると、着床した部位が破裂したり、大量出血や腹膜炎などが起きる可能性もあり、こうなると命に関わります。
子宮外妊娠と診断された場合は、早いうちならば投薬治療が可能なケースもありますが、受精卵の成長が進んでしまっていた場合や卵管の破裂などが生じている場合には、一刻も早い手術が必要になります。
検査薬は陽性でも、流産や疾患の可能性がある?
流産
妊娠した女性が最も恐れるものが、この流産ですが、実は全妊娠の中でも、1割〜2割という、決して低くない確率で起きることです。
妊娠に気付かずに無理をしてしまったり、転んでお腹を打った、というような不慮の出来事など、母体が原因による流産も勿論ありますが、妊娠の初期、妊娠3ヶ月までに起きる流産の大多数は、受精卵(胎児)側の染色体異常といった、先天的な異常が原因となっています。
中でも、検査薬で陽性の結果が出たのに、生理予定日にいつもの生理と同等・または少し多い出血があるような超初期の場合は”化学流産”と呼ばれます。
これは”一度着床はしたためにhCGホルモンが尿中に現れたが、それが続かず、胎盤などを生成する前に自然に生理が来てしまった”状態を意味します。
科学流産が起きた場合は、子宮内のものが全て流れていれば、特に処置などはなされませんし、女性の体に影響が起きることもほとんどありません。hCGホルモンの分泌もなくなりますから、じきに検査薬は陰性を示すようになります。
しかし稀に、胎盤などの組織が残ってしまってしまうことがあり、この時は処置が必要になります。
胞状奇胎
子宮内に着床するために、受精卵の表面に絨毛という組織が作られることは先に触れましたが、この絨毛細胞が異常増殖を起こし、水泡状の細胞が子宮内に広がってしまうのがこの疾患です。
この疾患も、受精卵自身の先天的な異常が原因で起きるものであり、女性側に問題があるわけではありません。
この疾患と診断された時は、妊娠を継続することはほぼ出来ません。放置すると絨毛がんに悪化する可能性が高いためです。
生理予定日付近の出血、もしかしたら着床出血の可能性
化学流産の時は、生理と同等か多めの出血があるため、そうとわかる傾向があります(または、検査薬を使わずにいたため、そもそも妊娠に気付かない可能性もあります)。
しかし子宮外妊娠、そして胞状奇胎の場合には、初期にはあまり自覚症状がないため、本人でさえも気付けません。
出血があるとは言っても、ほんの少し、トイレの際に拭いたペーパーにつく程度だったり、茶色のおりものがある程度だからです。
しかも、困ったことに、正常な妊娠でもこの程度の出血――”着床出血”が起きることもあるからです。
着床出血とは、その名の通り、受精卵が着床する際に起きる出血です。
子宮の内部には、多数の血管が存在します。受精卵が着床し、子宮内膜の中に入り込んで行く時に、この血管を傷つけると、当然出血が起こるわけです。
ただ、この血管は細いため、出血量は僅かなものですし、痛みを感じる人もいますが、これも軽いものです。
着床出血が起きる可能性は、50人に1人程度と言われており、大半の人が妊娠が分かってから「あれが着床出血だったのか」と気付くほど、その症状は軽いものです。
何日もダラダラ続く、痛みが治まらないといった場合には、やはり何かしらの異常を疑ったほうがいいでしょう。
検査薬で陽性が出たら、早いうちに産婦人科を受診しよう
妊娠検査薬は、確かに女性にとって強い味方ですが、このような疾患の有無までは判別することはできません。
なにしろ”hCGホルモンが規定値以上あるか・ないか”しか、調べることが出来ないからです。
ですから、検査薬で陽性が出た場合には、必ず早いうちに産婦人科を受診する必要があります。
産婦人科では、エコーを使って子宮内の状態を確認することが出来ます。
無事に受精卵が着床し、妊娠5週目以降になると、子宮内に”胎嚢”と呼ばれる小さな袋状のもの、そしてその中に”胎芽”と呼ばれる、後に赤ちゃんになる細胞があることが、エコーによって視覚的に確認できます。
これらが子宮内に確認できれば、子宮外妊娠の可能性はなくなります。
胞状奇胎の場合も、早い時には6週目以降からこのエコーで確認できることもありますし、その他の疾患(性感染症やがんを含む婦人科系疾患)の有無も、血液検査などで確認することができます。
このような検査は、産婦人科でしか行えません。ですから、早期の産婦人科の受診が重要なのです。
もし仮に、今回取り上げた疾患・異常妊娠であったとしても、早め早めに処置をすることで、次の妊娠へのリスクを軽減することが出来ます。
不安だけど、確かめるのも怖くて…と尻込みする気持ちは理解できますが、放置が一番危ないことだと理解しましょう。
そして「もしかして」と思ったならば、すぐに医師に相談をするクセを、今から付けておくのも重要です。
- 産婦人科のお話し