里親の悩み”子供の試し行動” 〜 適切な対応と、子供の本当の望み
里親になると決め、いざ子供を引き取りました。こちらは準備万端ですし、とても可愛く感じているので、子供にとって不自由なく育てたいと思っています。これからは血の繋がった親子のように、一緒に暮らしていきたいと―
そして、子供の気持ちも良く察し、考慮したうえで、望むようにしてあげたいと思うでしょう。しかし、全ての感情を把握して満たしてあげることはできません。それは実の親子でも同様です。
良く聞かれる「試し行動」はその一つ。理由はわかっていても、その対応に悩んだり、長引くと気持ちが折れそうになったり・・。そんなとき、どのように子供と向き合えばよいのでしょうか。
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里親がまず悩む、子供の試し行動 ― その理由を確認しましょう
まず子供のその行動が、本当に”試し行動”なのか、純粋なわがまま(甘えてくれている)のかを見分けることは大切です。適切な対応が変わってくるので、ここを見極めるのは重要なことです。
試し行動をする心理について理解しておくなら、その見極めに役立つでしょう。
そもそも「試し行動」とは、”大人の愛情を確認するための行為”です。「この人は自分を愛してくれているだろうか?」という不安な気持ちが根底にあるのだと言うことを覚えておきましょう。
実の親子間でも、または教師と生徒、更には大人になってからの恋人同士の関係でも、「試し行動」が見られることがあります。
ストレートに「わたしのことを大切に思っている?」と聞くのは、子供でも怖いのです。たとえ普段の生活を不自由なく養っていても、「好きだよ」と言葉にしなければ伝わらないことって、ありますよね。
『里親と子供』というケースなら尚のこと、普段から「君の事を大切に思っているよ」と言葉で伝えていたとしても、実績が少ないので、子供は不安になっていることが多いでしょう。いざというとき本当に見捨てず守ってくれるか、また施設に逆戻りということにならないか・・。
次の項目では、試し行動をとる子供の不安について見ていきましょう。
子供の試し行動に戸惑っているのは里親だけではない
子供自身も、「自分は今、試し行動をしている」という自覚の元に行っていることが多いです。
わざと困らせるようなことをするわけですが、そのとき、一線を越えたことを「敢えて」行います。許容範囲内のレベルのイタズラなら見捨てられない自信があるので、”試し”にならないからです。
「これは怒るだろうな、最悪見捨てられるだろうな」ということを敢えて行う。それが許されるかどうかで愛情を確かめるのです。それがクリアできても、しばらくすればまた不安になってしまいます。それで、試し行動を繰り返す―というループです。
里親としては、理屈はわかっていても「まだ愛が伝わらないの!?」「いつまで疑うの?」と感じ、疲れることもあるでしょう。自分は嫌われているのではないか、そもそも性格が合わなかったのでないかと、里親自体を諦めてしまう気持ちになるかもしれません。
しかし、子供自身はもっと不安な気持ちで、だからこそ試し行動に至っているのです。やっと自分を受け入れてくれる家庭が見つかったけれど、もしこの先またそれを失ってしまうとしたら・・。里親が決まる前より悲しい気持ちになります。子供はそれが怖いのです。
子供にとっても、試し行動は”賭け”です。もしこれで里親に愛想を尽かされたら、居場所を失うからです。里親と子供が次のステップ、”確固たる信頼を築いた関係”に進むために乗り越えるべき障害を、自分から作り出していると言うわけです。
幼い子供でも試し行動は表れる ― 里親としてできること
そこまで深く考えて行動できない、まだまだ本能のままに生きているような年齢の子供でも、試し行動が表れることはあります。この場合、子供本人は「大人の愛情を試してみよう」とはっきり自覚しているわけではないかもしれません。
しかし根底にある想いは同じです。これから積み上げていく信頼関係を試す上で、わざと気を引こうとするのです。
”また離れ離れになるのが嫌だから、恐怖心の裏返しで試し行動をとっている”、とそこまで複雑ではないかもしれません。だからこそ、信頼関係を築いたり、躾をする上では”チャンス”とも言えるでしょう。
意識していない試し行動も、実の親子関係でも見られることです。「里親だから」と思うことはありません。
家事や他の兄弟などは置いておいて、もう自分だけを見て!という気持ちから、気を引く行動をとる性格の子供はたくさんいます。褒められるのが嬉しくて良い行いばかりしようと努める子も居れば、より大きな音が出るようにコップを投げて割ってみたり、大声で騒いだりと、「怒られるのでもいいからこっちを見て」、という子も居ます。
「試し行動」と「ワガママ」対応の違いって?
良くご承知とは思いますが、試し行動でもワガママに対する躾でも、結果を出すには「時間と根気」が必要です。そして、イタズラをしたとしても、子供の心の根底にどんな思いがあるのかを理解した上で接するべきですね。
試し行動の場合、子供が行った”悪さ”を頭ごなしに叱るのはどうでしょうか。確かに”悪さ”自体は悪いことです。もし他人に危害を加えるようなことなら、尚更真剣に叱らなければなりません。しかし、そのあとアフターフォローが必ずしも必要です。
悪さをした「行動」について叱っているのであって、子供の存在自体を否定しているわけではないのだということを、子供に理解させなくてはなりません。例えば、「悪い子」という表現は好ましくありません。悪いのは子供ではなく、その子が今行った「行動」だからです。その子自身も、行動に至った「原因」も、悪くないからです。
似て非なるものが「わがまま」です。特に、大人の愛情を試すという目的の元に無い、ただのワガママの場合は、どうすべきでしょうか。
それは躾としてストレートに叱りましょう。この場合も、「悪い子ね!」という言葉は是非避けるべきです。「自分の感情のままに好きなことばかりするワガママな子は、悪い子よ」と、『まだ悪い子じゃないけどね』『一緒にワガママ治していこう』というスタンスなら良いかもしれませんね。
試し行動にはとことんつきあう。その対応とは
「この一つをやっていれば大丈夫!」というオールマイティな対応策はありません。何度か記述しているように、「時間と根気」は必須事項です。
まず、試し行動をした子供の話はしっかりと聞いてあげてください。
大人でも悩みがあるとき、解決策を知りたいのではなく、ただ話を聞いて欲しいというときがありますよね。子供は特にそういった気持ちが大きいです。
子供にとって、「どうしたら問題を解決できるか」は、教えてもらうと言うより自分で考え学んでいくものです。大人の役割はその環境を整え、話を良く聞き、よき理解者になってあげることではないでしょうか。
「今のは試し行動だな」とわかったとしても、『試してるだけだよね、大丈夫、安心して』とこちらから迎えてあげるばかりではどうでしょうか。まずは、『どうしたの?』と聞く姿勢を見せてあげてみましょう。
先回りで気持ちを代弁してばかりいては、子供は自分の気持ちを表現するのが苦手になってしまいます。大声で気持ちを爆発させてもいい、暴れることで表現してもいいから、あなたの気持ちを教えて、というスタンスで、どんと構えて受け止めましょう。
子供が自分の持てる表現力を全て使って気持ちをぶつけてくれたら、思いっきり受け入れてあげてください。年齢に関わらず、抱きしめ、頭をなでて、言葉で愛を表現しましょう。こうして入れてもらえた快感と実績が、厚い信頼関係に繋がることでしょう。
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