知的障害の原因とは。リスクを減らすために妊娠中にできること
知的障害を引き起こす原因となるリスクにはどのようなものがあるのでしょうか。
原因不明のことも多くありますが、妊娠中の過ごし方ひとつで、生まれてくる子どもに障害が出たり出なかったりすることがあります。
胎児にとっては、お母さんのお腹の中が全ての環境で、お母さんが食べたり飲んだりするものがそのまま赤ちゃんの栄養になります。
胎児の脳の発達にとって阻害原因となることを知っておきましょう。
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知的障害の原因とは。妊娠中の喫煙や飲酒もリスク要因に
人口の1割ほどの割合で、知的障害を抱えている人がいます。この20年ほどで知的障害者の人数は増加傾向にあります。
生まれてきた子どもに知的障害があるかないかは、育っていく過程で明らかになり、18歳頃までにわかることがほとんどです。
赤ちゃんの頃に知的障害を指摘されるケースもあれば、中学生になってわかる場合もあります。
妊娠中にお腹の子どもの知的障害がわかることはあまりありません。
妊娠中にわかりやすいのは、例えば心臓の異常や、無脳症など、胎児の臓器に明らかな欠損がある場合や、骨の奇形や、指の数が多かったり少なかったりする異常です。
知的障害は脳の発達途中で生じるもので、日々の暮らしの中で次第に明らかになります。
染色体異常などを伴う重度の知的障害である場合は顔つきなどからも判別されますが、軽度の場合は、子どもの外見なども普通のお子さんとあまり変わりません。
妊娠中に子どもの脳の発達にとって良くないことが起きれば、それは知的障害の原因となりえます。
実際に妊娠中の喫煙、アルコール摂取・薬物摂取や、妊娠中の栄養不足、母親が受けた極度のストレスなどが胎児の脳の発達を妨げることがあると知られています。
知的障害の子どもが生まれる原因は?妊娠中のリスクも
知的障害の子どもが生まれる原因は様々ありますが、その多くは原因が不明です。
遺伝的な要素が全くないとは言い切れませんが、知的障害児の約半数は両親が全くの健常者です。
うち55%以上は、遺伝子の突然変異によって知的障害が生じています。
実際のところ、知的障害の子どもが生まれる原因としてどのようなものがあるのでしょうか。
一般に知られているものとしては、以下のようなものがあげられます。
理由がはっきりしている症例は、全体の3分の1程度です。
- 染色体の異常―ダウン症、脆弱X症候群など
- 妊娠中の問題―妊婦のアルコールや薬物摂取、一酸化炭素中毒、栄養不良、ヨウ素不足、感染症、子癇などによるもの
- 出産時の問題―出産時に赤ちゃんの脳が酸欠状態になったり、また極度の低出生体重児だった場合
- 病気や怪我によるもの―髄膜炎や百日咳、はしかなどの感染症や、頭部のケガ、極度の栄養不良、脳の感染症、また深刻な育児放棄や虐待など。
これらのことは、脳の発達にダメージを与え、知的障害の原因となることがわかっています。
残りの3分の2のケースでは、原因がよくわかっていません。
喫煙や飲酒をやめるなど、できることから取り組んでみましょう。
知的障害の原因となる、妊娠中の感染症を予防しよう
妊娠中に母体が感染症になると、胎児に良くない影響があることは知られています。
特にいくつかの感染症は、胎児の神経系の発達の妨げになるので注意が必要です。
実際のところ、どのような感染症に気をつければ良いのでしょうか。
1.風疹
お母さんが風疹の抗体を持っておらず、妊娠中に初めて風疹にかかった場合、赤ちゃんに胎内感染する恐れがあります。
〈予防策〉風疹にかかっておらず、妊娠を希望する場合は、ワクチンを打っておきましょう。
2.水疱瘡
妊娠中に初めて水疱瘡にかかると重篤化する恐れがあります。胎児には胎盤を通して感染し、「先天性水疱瘡症候群」を引き起こします。
〈予防策〉抗体を持っていない場合は、妊娠する前に水痘ワクチンを受けておくことが望ましいです。
3.梅毒
梅毒は性行為によって感染します。梅毒トレポネーマは胎盤を通して胎児に母子感染するので、注意が必要です。
〈対策〉感染がわかったらすぐにペニシリンという抗菌薬を大量投与して治療します。
4.サイトメガロウィルス
サイトメガロウィルスは常在菌なので、多くの人が抗体を持っています。ですが、母体が抗体を持っておらず、初めて感染した場合、胎児に母子感染するときがあります。
感染によって胎児に何らかの症状が出る可能性は10~30%で、多くの場合は無症状で済みます。
〈予防策〉感染経路で最も多いのは、小さな子どもの唾液や尿に触れることです。お子さんと同じコップやスプーンを使うことを避け、こまめに手洗いをしましょう。
風疹と梅毒については妊娠初期の血液検査で調べることが義務付けられています。
母子感染のリスクを減らすために、早めに対策しておきましょう。
知的障害とは?どのような種類があるのか解説
知的障害には軽度・中度・重度・最重度の4つの等級があります。
軽度知的障害
IQが50~70程度で、小学生程度の知性に留まる。漢字や計算の習得が難しいが、生活上必要最小限のことはできる場合もあり、知的障害と診断されてないことも多い。
中度知的障害
IQが35~50程度。精神年齢は幼稚園生ほど。言語能力や運動能力にも問題があり、ひらがなの読み書き程度。日常のことを自分ひとりですることができない。
重度知的障害
IQが20~35程度。3歳~5歳程度の知性で、あいさつ程度の言語能力。生活に介助や介護を必要とする。
最重度知的障害
IQが20以下。3歳以下の知性。言語能力が乏しく、認識能力もあまり持たない。食事や排泄なども困難で、寝たきりの場合もある。
知的障害を持つ人の8割は軽度知的障害で、残りの2割が中度・重度・最重度知的障害になります。
知的障害の子はゆっくり成長。妊娠中は安心して過ごしましょう
知的障害は知能指数(IQ:intellectual Quatient)のみによって判断されるのではありません。
「適応能力」と呼ばれる、普通の日常生活を送るのに必要な能力の有無によっても判断されます。
また、同じ年代の他の子ども達と比べたときに発達の遅れがあるかどうかというのが指標になります。
能力には個人差があり、伸びる時期もまちまちです。成長が人より遅くても、成人するまでに同じレベルまで到達する場合もあります。
ですが一般的には、知的障害を治療する方法はありません。
知的障害の子には確かにより多くの支援が必要になりますが、自治体や民間のサービスでも様々な支援が用意されています。
たとえ知的障害があっても、子どもはゆっくりペースで成長し、ある程度の段階までは到達することが可能ですので、妊娠中はあまり心配せず、心身をいたわりながら過ごすことが大事です。